連日うだるような暑さが続き、
とうとう都内でも40度を越えたとのこと。
セミの種類にもよるようだが、
概ね35度を超えると蝉も鳴かなくなるという。
そういえば蝉の鳴き声を今年は聞いていない気がする。
最寄駅のホームへ向かう人混みの中に、
思わず目を見張るような光景に遭遇した。
目の前を歩いている男性会社員の
半袖のワイシャツの右腕に
蝉がぶら下がっていた。
ここで誰しも生じうるであろう葛藤が、
彼に「すみません、腕に蝉がとまっていますよ」と
一声かけるか否かである。
ここで一声かけられるかどうかは、
簡単そうで意外と難しい。
色々物騒な世の中である。
些細な一声で逆上され
酷い目にあう可能性も否定できない。
だがそもそも、
例えば満員電車で席に腰掛けていたときに、
目の前の男性の”社会の窓”が開いていたらどうであろうか。
また、目の前を歩く女性のスカートの
ファスナーがあいていたらどうであろう?
あなたは声をかけられるであろうか。
そうこうしているうちに、
男性は地下への階段を駆け足気味で下り改札方面へ、
私も小走りになり追跡を続ける。
だいぶ激しい揺れを伴ったのにもかかわらず、
男性の右腕にとまったセミは微動だにしない。
よく見ると全体的に白く、
羽は透き通った透明であるからして、
アブラゼミではなくミンミンゼミだということが確認できた。
ミンミンゼミはまさにその名の通り、
ミンミンと鳴くので、その音色を聞けば、
誰もが夏を感じざるを得ない。
人混み中を進むも、
哀しいかな都会の性とも言えるであろうか、
誰もミンミンゼミを腕に宿した
男性会社員に気をとめることはない様子だ。
唯一、改札で男性の真後ろに立った、
部活帰りと思われる体操着姿の女子高生の体が、
スマホから目を上げた瞬間にビクっとしたので、
おそらく腕にミンミンゼミをくっつけた男性会社員の
シュールな状況に気づいたのであろう。
さて、このままセミを腕に男性が電車に乗車することは、
最大多数の最大幸福と言えるのであろうか?
この状況はすでにこの男性一人の問題ではなく、
社会の問題だ。
電車の中でセミが鳴きだしたら大変だ。
若干の焦りと戸惑いを持って、
思考を巡らせ、男性に一言
「セミ、ついてますよ」と、
言うか言わないかをまだ迷っていたら、
ある確信に行き着いた。
「電車の中はクーラーが効いていて、
少なくとも35度以下」
これは一大事、
もう一声かけるしかないと決意した瞬間、
男性会社員は突如、
下り方面ホームの階段を、
ミンミンゼミを腕に駆け上がって行った。
一言声をかけることに躊躇した自分を、
悔やむ帰路となった。
おせっかいでも、気づいたことには、
赤の他人であっても一瞬の勇気を持って、
一言かけられるようになりたい。
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